蜥蜴転生 ~趣味人間、異世界にて最強を目指す~ 第4話
第1章
第4話 幼蜥蜴喰らい
意識が芽生えてから二日が経過した。
所で、言いたいことがある。
(ここはどこだぁぁぁぁぁッ⁉)
そう、昨日『集中』を使い最大MPを上げようと気絶。
そして目を覚ましたら…まるで知らない洞窟の中に居ましたとさ。
いや、訳が分からないヨッ⁉
自分で自分にツッコミが入る程意味不明な展開。
これは…一体どういう事なんだ?
まぁいい、こういう時は素数を数えて落ち着くのだ。
どっかの誰かもそう言っていたハズッ!
1,2,3,5,7…あれ?1は素数じゃないんだったか…?
いやいや、そんなコトはどうでもよろしい。
さて、自分のあまりのアホさで結果的に冷静になれたのでよろしい。
まずは周囲を見渡してみよう。
バスケットボール大の卵の殻が5,6個と…肉がついてもその中に納まるぐらいの小さな骨達…。
解析してみるか。
リザードべビーの卵の殻 ワームの大好物
リザードベビーの骨 ワームの大好物の残りカス
・・・まさか、俺…食料として攫われた?
気絶してたから俺は攫われてることに気づかず誘拐犯は俺が生きてることに気づかなかったと…? ホリーシーッドッ! 体に傷がない状態で運んでくれたのは嬉しいがさっきから身体の主に胴体に感じるこのめとめとは誘拐犯の唾液かぁッ⁉
ばっちぃぞこの野郎‼ 帰ってきたら目つぶし喰らわして逃げてやる!
いや、どんな奴が俺をさらったのか知らねぇけどさ。
ってか、ベビーから卒業するにはどうすればいいんだ?
やっぱり…魔物倒してレベル上げ?
きつくね?俺、まだベビーだぜ?
あ…もしや、卵から出た時点でベビーは卒業できたのか?
俺が変に穴空けて自分からでなければ中で勝手にレベル5まで上がって進化できてたとか? …オーマイガーッド! なんてこった…。
大人リザードマンが言っていたそろそろってのはそういうことか…!
ん? なんだこの妙な音は…
ズリ…ズリ…と徐々になにかがこちらに向かってきているぞッ!
そうか…この洞窟の主、そして俺を攫いやがったクソ野郎かッ!
だが、この音は2足歩行でも4足歩行でも出せない音だ。
まさか、誘拐犯は何者かによって重傷を負わせられたのではッ⁉だとしたらラッキーだぞ!思いもよらない漁夫の利でベビーを卒業できるかもしれない!
そう思った俺は、洞窟の地形を利用し向かってきている何者かの視界の死角に入るように岩壁の影に隠れる。
あれは…なんだ、芋虫…だと?
そうかッ! 何も動物型や昆虫型だけではない!
常時身体をずって進む幼虫型を忘れていた!
今、俺の解析はⅡになっている。
Ⅰの時は自分の情報しか読み取れなかったが…
俺は見れたら儲け物の考えで芋虫を見ながら解析と念じる。
名前 無し ♂
種族 芋虫:ワーム
状態 飢餓
称号 幼蜥蜴喰らい
レベル :3/8
HP :5/12
MP :0/0
筋力 15
耐久 5
敏捷 2
魔力 0
魔耐 0
運 5
スキル
『酸の体液Ⅱ』『噛みつくⅠ』
耐性
『毒耐性Ⅰ』
よしッ!読み取れたぞ!
恐らく、このワームが俺と同ランクの魔物だから読み取りに成功したのだろう。
ランクという項目は無いが、ステータスを見る限り俺と同じぐらいの強さだ。
それに、こいつには魔力というモノがない。
MPも完全なゼロだ。と言っても、俺が魔法を使えるわけではないが…
さて、どうするか…。
こいつならワンチャン倒せそうな気がするが…。
1、君子危うきに近寄らず。誰がわざわざ危険を冒すかバカ者!
2、危険を冒すリスクを考慮しても、進化できるかもしれないメリットは大きい。
さて…俺の選ぶべき道はどちらか…。
・・・よし、決めた。俺は2を選択するッ!
「グァーッ!」
威嚇の意を込めた咆哮をワームに浴びせ、俺はワームの身体に爪を突き刺し抜く。
すると、グロテスクな液体がブシャーっと噴き出てくる。
ドロ…
何いッ⁉
洞窟の壁が…溶けた、だとぉッ⁉
そうか、『酸の体液Ⅱ』というスキルかッ!
俺の『竜鱗』と同じような種族スキルであるアレか!
チッ…奴の身体に突き刺した爪が溶けている。
下手に攻撃するとマズいことになるな…。
ならッ! とっておきの策を出してやる!
え? とっておきの策ってなんだよって?
へっ…逃げるんだよ~ん!
「クァーー!」
口元を歪め、高音から低音へだんだんと下がる鳴き声をあげる。
これの意味は…挑発であるッ!
そう、俺は何もただ逃げるのではない。
挑発し怒らせ、敵の思考を単純にし洞窟内で暴れさせ生き埋めにしようという作戦なのだッ!
勿論、逃げるのは俺が洞窟の崩壊に巻き込まれないためである。
全速力で洞窟の出口へ走る。
幸い、入り組んだ洞窟ではなく…一か所カーブしているだけの洞窟だったので隠れている時から出口は見えていたのだ。
だから迷う可能性を考慮する必要は皆無ッ!
「ギチギチギチギチッ!」
歯ぎしりのような不快音を口から出しながらワームはこちらに向かってズリズリと進んでくる。
洞窟の外へ出ると、俺は石を手に持つ。
(『集中』発動!)
そして、集中を発動し狙いを定め石を奴の目玉らしき部分に投げるッ!
「ギシャァァ―――ッ!」
(『集中』解除!)
集中状態を解きMPの消費を抑える。
次に、洞窟の隅の方へ石を投げて俺がいる位置を誤認させる。
「ギチギチギチッ!」
テメェ、見つけたぞ…と思ったな!
その喜ばし気な鳴き声で分かるんだよッ!
だが…テメェが俺だと思っているそれは俺が投げた石!
そこを思いっ切り攻撃してみろ…そこはさっきテメェの体液で溶けちまった場所!
洞窟が崩れるぜッ!
ドドドドドドドッ‼
ハッハーッ! やりぃー!
ちょろいぜ!
「ギチ…チ…」
何ぃッ⁉ まだ生きている…だとぉッ⁉
いや、貴様は死ぬのだッ!石を喰らえぃ!
微かに開いている口に向かって石を全力投球する。
「ギ…ギチ…」
よし、今度こそ死んだ。
絶対死んだ! 死んだよな…?
スキル『戦術Ⅰ』を獲得しました。
称号『策士』を獲得しました。
経験値を20獲得しました。
転生者の称号により更に経験値を20獲得しました。
『リザードベビー』のレベルが1から5へ上昇しました。
『リザードベビー』のレベルが最大になりました。
進化条件を満たしました。
勝った! 勝ったぞ…ふっふっふ。
俺は勝ったぞぉぉぉッ‼
ベビーの分際で成体をぶっ殺してやったぞぉぉぉッ!
「クァ―ッ‼」
あまりの喜びに勝利の舞的な物を踊りたくなる。
だが、それは我慢して…と。
こいつ…どうしてやろうか。
まぁ、ここは喰うっきゃねぇな…。
腹も減ってるし…って、こいつの体液酸なんだった…。
食えないじゃん。
んじゃ、進化条件満たしたとか言ってたし早速進化するとしますか。
(ステータス)
名前 無し ♂
種族 蜥蜴人族:リザードベビー
状態 通常
称号 転生者・世界を越えた者・策士
レベル 5/5(MAX) 進化可能↓
HP 8/25
MP 7/7
筋力 13
耐久 20(+10)
敏捷 9
魔力 8
魔耐 6
運 12(+10)
スキル
『言語理解Ⅰ』『集中Ⅰ』『解析Ⅱ』『幸運Ⅰ』『竜鱗Ⅰ』
『戦術Ⅰ』
耐性
『毒耐性Ⅱ』
ふむふむ、割と強くなった気がするな。
さて…確認すべきものも確認したところで進化したいんだが…
どうすればいいんだ?
ん? レベルの横に進化可能の文字と下矢印があるな。
ここを押せばいいのか?
ポチッとな…と。
進化先を表示します。
【未来】
『リザードマン』
『リザードリトル』
【現在】
『リザードベビー』
【過去】
ほー…つまり、少年期を経験するか一気に大人になるかって事か。
…解析したほうが良さそうだな。
『リザードマン』
蜥蜴人族の最終進化体。
その爪と鱗は非常に頑丈で、人族の間ではDランクモンスターと言われただの村人の間では非常に恐れられている。
これになるとこれ以上進化することはなくなる。
『リザードリトル』
未だ成長しきらぬ蜥蜴人族の進化体。
爪は短く戦闘力も低い。
だが、その潜在能力は高く進化先は多岐にわたる。
ふむ…即座に強くなりたいならリザードマンになるべきだが…。
将来性が無さすぎるな。
リトル安定だ。ただの村人相手に恐れられる程度じゃ弱すぎる。
そう思い、リトルに進化すると決心した瞬間、俺の意識は薄れていった…。