蜥蜴のブログ

自作小説の投稿など

蜥蜴転生 ~趣味人間、異世界にて最強を目指す~ 第6話

第1章

第6話 武器を作ろう

 

 

 

「ン…」

 

 微かに聞こえる、パチパチ…という火が燃える音と、僅かに出てきた日によって意識が覚醒する。

 

 仮称『太陽』は微かに見えるのみで、未だ空は薄暗い。

 地球で言う所の朝4時ぐらいの日の出具合だ。

 

「サテ…」

 

 左手は未だに痺れ、痛む。

 ぐっ…と力を籠めようとするが、麻痺して力を籠めることすら出来ない。

 そもそも、感覚が完全に断絶されているのだ。

 この感覚はアルコールを多量に摂取した時に似ていると思う。 

 前にこんな話を聞いた事がある。

 

 かなりの量の酒を飲み家に帰っていると…一瞬顔に電気が走ったような感覚。

 だが、特に痛みは無かったのでそのまま帰った…そして、洗面所に行き鏡で自分の顔を見ると、顔面血まみれな上腫れ上がっていてまるで別人のようだったッ!

 

 という話を。

 ちなみに、何故怪我を負ったのかは分からないそうだ。

 記憶も消し飛び痛覚も消し飛ぶ。

 麻薬にも似たような効果があるが、あぁ…今思えばなぜ俺は春奈ちゃんを止めなかったんだろう。

 明らかに飲み過ぎなのは分かっていたハズなのに…。

 

 ・・・いや、止そう…今更だ。

 未だ僅かに燃える火に砂をかけ消し、泉の水を一口飲む。

 さ、出発だ…。

 

 



 

 …あの泉のある場所を出てからおよそ1時間が経過したが…

 特に戦闘らしい戦闘は無く、食料としてクルスを3羽狩っただけである。 

 ちなみにレベルは上がっていない。

 

 現在地は不明。

 とりあえずの指針としては、武器を調達したいと言った所。

 人間の街へ行ければ武器の調達など容易だろうが、生憎と俺は蜥蜴人リザードマン

 もし見つけたとしても武器を買うコトはおろか街に入ることすら出来ないだろう。

 困った、どうするか…いや、そうだな。

 良いことを思いついた。

 

 あそこにある太い木なんてちょうどいいだろう。

 

バシーンッ!

 

 木の根元に思いっ切り飛び蹴りをかます

 だが、折れることはなく揺れるだけであった。

 

 ま、ですよね…分かっちゃいたよ。

 仕方ない…そこらの手頃な倒木を爪で削って剣にするか。

 

 ガリガリガリガリ

 

 ひたすら動かない左手で木を押さえつけ右手の爪で削り続ける事数時間。

 

 ようやく剣の形になってきた。

 

スキル『武具作成Ⅰ』を獲得しました。

 

 は? スキル武具作成?

 

 ・・・オイ、今まで何時間かは知らねぇが長い間ずっと削ってた俺の努力はどうしてくれるんだァ⁉ えぇッ⁉

 

 くっそぉ…魔物に涙腺があるかは知らんが気分的に泣きたくなってきた。

 どうしてくれんだよ…もう日が暮れちゃうよッ⁉

 

 いや…武器の調達が楽になったと考えよう。

 そうでなければやってられんッ!

 

「『武具作成』」

 

 ふむ…ステータスみたく表示が出てきたな。

 えーっとなになに…?

 

武具作成Ⅰ

 

作成可能武具

 

木製武具 消費MP:5

     消費材料:木の枝

 

 あぁ…なるほどなるほど。

 要は製作過程を省いてくれるのか。

 うん、じゃあ…この出来の悪い自作剣をちゃんとした形にしてくれ。

 

「サクセイ、キノケン!」

 

 当初の予定通り木の剣を選択し、途中まで作った木の剣? を持ちながら発動を宣言すると、持っていた木の剣? が一瞬眩く光り、その光が収まると…そこには、RPGでよく見るような柄の部分や刀身がしっかりとある見事な木剣が出来ていた。

 

 あぁ…もうホント、嫌になる。

 おっと、いかんいかん。ポジティブに行かねば、ポジティブに。

 

 さて…と。

 日も暮れてきたしそろそろ飯を食いたいな。

 

 そうだ、この前火起こしたんだしこれからは焼きクルスにするかッ!

 

 



 うしっ、クルスも3羽確保出来たし火も起こせた。

 あとは飯食って寝るだけっと!

 ってか、流石にレベル上がらねぇな…。

 まぁ、そこまで急いで強くなりたいわけじゃねぇからいいんだがよ。

 

 じゃ、毛皮を爪で剥いで…肉を丸出しにて、串状に加工した木の枝をぶっ刺す!

 そして…それを火にかざしてしばらく待てば、クルスの丸焼きの完成!

 いい焼き色になったところで、早速かじりつく。

 

 瞬間…溢れ出す肉汁。

 肉は淡白でありながら噛み応えがあるぞッ!

 加えて…生で食っていた時のような若干の臭みも消えている…。

 

 こりゃ、予想以上にうめぇな!

 フランスではウサギ肉は高級料理の一つであると聞くが…

 マジに美味いぜこりゃ…それに、今の俺は魔物。

 人間の顎の力より遥かに強力だ。

 その俺でさえ噛み応えを感じるんだ…本当に唯のウサギを見つけたとしてもこれには敵わなそうだなぁ…魔物飯、結構イケるぞ!



 いや、マジに美味かったぜ…。

 地球並みのちゃんとした料理を作れるようになったらどうなっちまうんだろうな…

 そんなコトを考えながら、俺は集中を使い眠りについた。






 翌日。

 朝となり目が覚める。

 太陽は出てきたばかりで周囲はまたもや薄暗い。

 

 魔物としての生存本能か何かか?

 定時の仕事のようにいつもこのぐらいのタイミングで起きるんだが…。

 

 まぁいい、朝起きるのが苦手で春奈ちゃんと知り合うまでは母親に起こされ知り合ってからは春奈ちゃんに起こされていた俺からすればこの定時起床は正直助かる。

 

 え、なに?通い妻ですか馬鹿野郎?

 …今思えば確かにそうだね。うん…小説に夢中になりすぎてて気付かなかったけど、確かに幼馴染でも何でもないのに起こしてくれるとかマジで通い妻だわ。

 

 まぁ、助手だからシェアハウスで一緒に住んでたんだけどねッ!

 だから俺は稼いで春奈ちゃんの家賃も払って春奈ちゃんには家事を任せていたよ。

 俺…家事壊滅的だからねッ! 今はまだ焼くだけだから出来てるけど、凝った料理とか作ることになったら謎の物体Xしか出来ない自信がある。

 

 なんせ、インスタントで失敗する男だからねッ! 

 

 んんッ…過去の振り返りはここまでにして、旅を続けるとしよう!

 えーっと、昨日作った木の剣は…………ない。

 

「ホリーシーッドッ!!!」

 

 オイオイふざけるなよこの野郎。

 どこに遊びに行っちまったっつーんですか…えぇ?オイ。

 

 ないぞ…どこにもない…。

 

 

 へっ、もういい!

 枝なんかそこら中にあるしもう一回作ればいいだけだろッ!

 

「キノケ…」

 

 ちょっと待てよ?

 あの剣、今の俺には長すぎて使えそうにねぇから串にしたんじゃなかったか?

 …そうだ、思い出した。自分でやっといて何はしゃいでんだ俺、馬鹿か。

 

 となると、ただの剣じゃ長いってことだな。

 じゃあ、小剣にするか。

 

「『武具作成』」

 

武具作成Ⅰ

 

作成可能武具

 

木製武具 消費MP:5

     消費材料:木の枝

 

 はい、それでは木の小剣を選択。

 左手は未だに動かないので右手で木の枝を持ち…

 

「キノショートソード、サクセイ!」

 

 発動を宣言する。

 すると、木の剣を作った時と同じく手に持っていた木の枝は光輝き…光が収まったころには…はい、見事な木製のショートソードが出来ましたっと。

 

 うん、これなら自在に振れるな。

 ハァ…一人旅ってのは、結構寂しいモノだな。

 …よくよく考えてみれば、俺の周りにはいつも人がいた。

 それは俺のファンだったり、家族だったり、助手だったりしたけど…

 長時間ずっと一人でいるときってのは、仕事中以外にはなかった…。

 取材のためにアマゾンに行ったりもしたけど、その時は春奈ちゃんがいた。

 

 結構、堪えるな…孤独ってのは。

 

スキル『孤独耐性Ⅰ』を獲得しました。

 

 はは…俺は孤独に強くなりたいんじゃなく、共に旅する仲間が欲しいんだけどな。

 ま、スキルを与えてくれている神様が気を利かせてくれたなら感謝をささげよう。

 

ガサガサッ

 

「ナニモノダ…」

「グルルル…」

 

 全身黒い毛皮に赤い爪と金の瞳を持つ犬…いや、狼か?

 が、俺の前に姿を現した。種族名は…ブラックウルフと言った所じゃないか?

 まぁ、解析すれば分かることか。

 

名前 無し ♂

種族 黒狼族:レッドクロウ

状態 憤怒

称号 レッドクロウの戦士 

 

レベル :10/15

HP :25/30

MP :0/0

 

筋力 30

耐久 8

敏捷 40(+10)

魔力 0

魔耐 0

運 10

 

スキル

 

『直感Ⅰ』『噛みつくⅤ』『切り裂くⅤ』『俊足Ⅰ』

 

 黒狼族ではあったが、少し違ったな。

 部族名みたいなもんかね?

 それにしても…苦笑いせざるをえないな。んだこりゃ…

 強すぎるだろ…これが脳筋って奴か?

 

 敏捷値なんて俺の5倍だし、筋力値も勝ってない。

 耐性と運、魔力関連は勝っているが…俺は魔法を使えんから意味がまるでないぞ…

 

 どうやって勝てばいい…クソッ!

 ふぅ…一度軽く深く息をつき気持ちをリセットする。

 冷静に考えろ、奴の攻撃手段は『噛みつく』と『切り裂く』。

 つまり、肉に噛みつかせれば負けなのだ…なら、腹や顔部分に比べ鱗が厚い背や腕部分を盾に剣で攻撃。

 これで行こう。

 

「ガウッ!」

 

 仕掛けてきたッ!

 腕の鱗を盾にッ!

 

ガキンッ

 

 よし…俺の鱗の硬度は奴の歯よりも上のようだな。

 なら、落ち着いて確実に堅実に守りヒットアンドアウェイで行けば…

 勝機はあるッ!

 

「グァーッ!」

 

 スキル『威嚇』を使用し、目の前の敵を威嚇する。

 遥か昔の中国に孫氏という兵法家がいたらしいが…曰く勝敗は戦が始まる前に決定しているそうだ。そう、奴は所詮性能頼りの獣ッ!知恵ある人に勝てると思うなッ!

 

 まずは…逃げるッ!

 

 木陰や空洞化した倒木を利用し全力で逃げる…。

 そして、数分後。今俺は空洞化した倒木の中にいる。

 

 ふぅ…なんとか撒いたか――――

 

「グルゥ」

 

 今、お前は俺を嘲ったな?

 この程度で俺の鼻を誤魔化せるわけがあるか馬鹿め…と。

 

 ふ…だからテメェは畜生なんだよッ!

 作戦はテメェがまんまとこの倒木の中に入ってきた時点で成功しているのさッ!

 

「クラエッ!シトツッ!」

「キャンッ!」

 

 そう、今回俺が考えた作戦、それは…言葉にしてみれば簡単な事である。

 逃げ回りながらいくら速かろうが関係ない、逃げ道のない場所…

 つまり、俺が昨日一日中木を加工していた時に座っていた倒木の中に誘導しまんまと入ってきた瞬間剣で突き刺すッ!それだけである。

 

 といっても、石でも鉄でもないからまだ死んでいないが…

 こいつは耐久値が低い、これだけでも十分弱っただろう。

 

 では…とどめの一撃ッ!

 

「クゥ…ン……」

 

スキル『剣術Ⅰ』を獲得しました。

スキル『盾術Ⅰ』を獲得しました。

スキル『戦術Ⅰ』が『戦術Ⅱ』へ上昇しました。

称号『卑劣な者』を獲得しました。

 

経験値を46獲得しました。

転生者の称号により更に経験値を46獲得しました。

 

リザードリトル』のレベルが5から7へ上昇しました。 

 

 うしっ! 勝った!

 ってか、剣術とか盾術とか獲得出来ちゃったけど…攻撃防いだのたった一回だし剣振ったの2回だけなんだが?こんな簡単にスキルってのはゲットできるのか?

 あぁ…そういえば、転生者の恩恵には経験値倍加のほかにスキル習熟速度倍加ってのもあったな…それの恩恵か。いや、習熟速度だろ?ゲットした後ではないのか?

 まぁ、俺からすれば得するだけだから別にいいんだが。

 

 …ま、なんにせよそろそろ移動するか。

 あ、この狼の死体は持っていこう。肉も食いたいし毛皮も加工できれば服にできるし…あ、でも俺裁縫出来ないわ。

 

 …裁縫の真似事してスキルが手に入ってやりぃー!って展開を期待するか…。

 さて、では旅を続けよう。

 

 

 

 

 

ステータス 

 

名前 無し ♂

種族 蜥蜴人族:リザードリトル

状態 毒

称号 転生者・世界を越えた者・策士・卑劣な者

 

レベル 7/10

HP 29/33

MP  4/9

 

筋力 24

耐久 37(+15)

敏捷 12

魔力 13

魔耐 11

運 12(+10)

 

スキル

 

『言語理解Ⅰ』『集中Ⅱ』『解析Ⅱ』『幸運Ⅰ』『竜鱗Ⅱ』

『戦術Ⅱ』『直感Ⅰ』『切り裂くⅠ』『威嚇Ⅰ』『武器作成Ⅰ』

『剣術Ⅰ』『盾術Ⅰ』 

 

耐性

 

『毒耐性Ⅱ』『酸耐性Ⅰ』『孤独耐性Ⅰ』