蜥蜴のブログ

自作小説の投稿など

蜥蜴転生 ~趣味人間、異世界にて最強を目指す~ 第2話

第1章 異世界

第2話 転生

 

 

 意識が深い水底から浮き上がってくる様な感覚を覚えながら俺は目を開ける。

 だが、何も見えない。

 …まさか、意識だけがある植物人間状態になったとか言わないよな?

 腕とかも動かしてみよう。

 …ふむ、しっかり動くな。

 まぁいい、とりあえず… 

 身体は動く、しかし視界は真っ暗。

 つまり、俺は何かの中に閉じ込められている。

 もしくは失明してしまったという可能性があるな。

 じゃあ、とりあえず閉じ込められてる説から検証しようか。

 棺桶的な物だったら、上に持ち上げれば出れるだろう。

 

 …重いな。大分丈夫な物のようだ。

 今度は思い切り殴ってみよう。

 

 ぱきッ! ずぼっ…

 

 貫通してしまった…だが、これで失明した訳ではないというコトが判ったな。

 良かった…これでもし失明してたらラノベが書けなくなる所だった…。

 

 空けた穴から腕を引き抜く。

 それと同時に、真っ暗だった世界に一気に光が差す。

 その光に眼を細めながらも、穴から外を見渡す。

 

 ここは…森か?

 それに、微かに水が流れる音も聞こえる…。

 ということは…最低でも川、もしくは池がある。

 もしかすれば湖の可能性もあるな…。

 林立する木々や地面に生い茂る雑草が見える時点で海の可能性は無いと思うが…。

 

 ガサガサッ

 

 ッ! 何かが動いた音が聞こえた…今この中から出るのは危険だな。

 せめて、こちらに来る何者かがなんであるか分かればいいんだが…。

 

 あれは…なんだ?

 人、いや…蜥蜴か?

 なぜ、蜥蜴が人のように二足歩行をしているんだ…⁉

 クソッ…訳が分からないぞ。

 まさか、リザードマンだなんてことはあり得んだろうし…。

 そんなのは、空想の産物だって現実に居るものではないしな…。

 だが、まぁ異世界系の小説書きとして異世界転生には憧れを抱いてはいたが…っと、やめだやめだ。あり得ないことをいくら空想していても仕方がない。

 

「ン?穴ガ空イテイル…ソウカ、モウスグカ…ヨシ、食料ノ調達ニ行クカ」

 

 喋った⁉ ということは、人間が蜥蜴の着ぐるみを着ているだけか…?

 というか、さっきあの謎生物は俺を見て穴が空いていると言っていた…。

 そして、もうすぐという言葉…。

 まさか、俺は卵の中にいるのでは?

 だが…俺は人間であるから卵生ではない…。

 いや、俺は春奈ちゃんを庇って死んだ…なら、本当に…?

 いやいや、推測だけでモノを語るのは良くない。

 あの謎生物がいなくなってから、自分の顔を水で確認しよう。

 そうすれば、全てがわかるハズだ。

 

 …

 ……

 ………

 

 いなくなったか…。

 よし、立ち上がり水の音がする所まで行こう。

 

 ぱきッ! ずぼっ…

 

 脚の方も貫通した…やはり、卵?

 いや、止せ。推測はどこまでいっても推測に過ぎない。

 事実を確認するのが一番早いのだ。

 

 サラサラという音が聞こえる方へペタペタと歩いていく。

 足の指先の感覚が5本から3本に変わっていて既に違うがやはり顔を見て完全な確信を得ておきたい。そうでなければ、いつまでも未練を残してしまう。

 

 ・・・あぁ、やはり…俺は転生したのか。

 鱗に覆われた身体、足の指は3本となり手の指は5本。

 脚の方には違和感があるが、手の方は何ら違和感はない。

 だが、何より違和感を感じるのは尻の方。

 まだ卵の中にあるから見えないが、確実に尻尾がある。

 しかし、翼は無いようだ。

 

 …うん、どう考えてもリザードマンだな。

 まぁ、まだ身体のほとんどは卵に覆われているから分からないところもあるが。

 

 しっかし…まさか、俺が異世界に転生することになるとはなぁ…。

 それも魔物転生だ…飲み会の時考えていたシナリオじゃあないか…?

 主人公が転生してリザードマンになるって…。 

 まぁ、関係ないとは思うが。

 そうだ。異世界転生、しかも魔物がいるようなファンタジー系と言ったらやはりステータスだろう。出たりするのか…?

 

「グァー!」

 

 …ま、ですよね。

 あの成体と思われるアイツは言語を喋れていたようだが…

 俺はまだいわゆる生まれたて…それも卵。

 赤ん坊が喋れるわけもないか…。

 

 じゃあ、心の声で!

 

(ステータスオープン!)

 

 …ダメか。まぁ、そりゃそうだ…。

 いくら異世界と言えどゲームじゃないんだから、そんなの出るわけないよな。

 

 ………いや、どうも諦めきれん。

 言葉が違うだけだったりしたら哀し過ぎる!

 もう少し試してみようじゃないか!

 

(メニュー!)

 

 …違うか、ならば!

 

(ステータス!)

 

 おっ!

 なんか出た!

 

名前 無し ♂

種族 蜥蜴人族:リザードベビー

状態 通常

称号 転生者・世界を越えた者

   

レベル 1/5

HP 10/10

MP  5/5

 

筋力 8

耐久 15(+10)

敏捷 4

魔力 3

魔耐 1

運 12(+10)



スキル

 

『言語理解Ⅰ』『集中Ⅰ』『解析Ⅰ』『幸運Ⅰ』『竜鱗Ⅰ』

 

 ちょっとちょっと、困るんだけど⁉ 年甲斐もなく興奮してきたんだけど…!

 まぁ、まだ25だけどさ! でも、こういうのに興奮する年代としては少しグレーな年齢だよねぇ! いや、しかしこの世界に前の世界の人間はいない!

 つまり、常識も何もないのだから別にいいというコトだぁッ!

 いやっほぉぉうッ! こういうのに憧れてたんだよぉッ!

 原理だとかそういうのはどうでもいい!憧れてた世界に来れたんだからそんな細かいのはどうでもいいんだよ!物語を書くのは相も変わらず好きだが、それよりも…俺が物語を書き始めた理由たる憧れの世界に来れたんだ…神様が俺をここに送ってくれたなら感謝しよう!いや、もはや崇め奉ろうではないか!…最高だ。

 

 …んんッ!興奮しすぎたな、落ち着け石橋和馬。

 ステイクールだステイクール。

 

 さて、この解析Ⅰというスキル。

 恐らくこれは異世界転生系小説で言う所の鑑定と同じような物だ。

 そして、このⅠはレベルのようなモノ。

 つまり、解析の精度を表すのだろう。

 ということは、まだ精度は悪いと思われるが…0と1の情報差は大きいからな。

 

 よし、決めた。

 解析Ⅰを使いスキルと称号の詳細を見る事にしよう。

 

転生者:獲得経験値、スキル習熟速度倍加

世界を越えた者:様々なトラブルに見舞われる

『言語理解Ⅰ』:同種族の言語を理解する。

『集中Ⅰ』:意識を集中させる。

『解析Ⅰ』:自分の技能や道具を解析する。

『幸運Ⅰ』:レベルが一つ上がる毎に幸運値が10上昇。

『竜鱗Ⅰ』:種族スキル。進化と共にレベル上昇。耐久値が10上昇。

 

 なるほど。

 集中に関しては俺自身の性質が関わっていそうだな。

 幸運か…どれだけの幸運なのかは知らんが、有益な物であってくれ。

 

 そして…問題は称号だ。

 転生者は間違いなく有益であるから良いとして、世界を越えた者…

 てめぇはダメだ。何がダメかってトラブルに見舞われるって所だ。

 ふざけるなチクショウ。まぁいい、これも転生者の定めと言う奴か。

 物語は様々な出来事があってこそ面白くなる。

 そうか、俺は神にその物語の登場人物に抜擢されたわけだ。

 だから前世の記憶を所持できているし称号による恩恵がある。

 いいだろう…しかし、主人公の座はこの石橋和馬のモノだ。

 モブになんざなってやるモノかッ!

 

 待っていろ神様…絶対に強くなってアンタらの期待を越えてやる!